SOUND MUSEUM VISION

渋谷の地下に広がるこの巨大なスペースには、さまざまな表情があります。

LUCKY DATE

LUCKY DATE

Lucky Dateこと Jordan Atkins-Loriaは、その輝かしいアーティスト名にもかかわらず、シーンにおいてその地位を確立するまでには相当の努力を要した。他に類を見ないそのプログ レッシブなハウスサウンドは、しだいにシーンの中で大きく注目を集めるようになり、シンセエンジニアとして、David Guetta やPorter Robinsonらのヒットトラックの影のプロデューサーとしてその実力を大いに発揮し、その名声は単にLuckによるものではないことを証明することになる。
いまや説明不要のスーパースターZEDDとの共作で、エリー・ゴールディングがヴォーカルを担当するというなんとも夢のようなトラック「Fall into the Sky」は、予想を上回るビッグヒットとなり、音楽史上に残る究極的なエナジーを楽曲で表現することに成功。現在ではすっかりプロデュー ス、Remixのオファーが殺到するほどのアーティストとなり、Madonnaの「Girl Gone Wild」のリミックスではAvicii とDada Lifeに肩を並べ、Steve AokiとKid Cudiとは実にパワーハウスなコラボレーションをし、2013年3月には現在シーンのトップに君臨するHardwellの「Apollo」のリミックスプロジェクトに参加するなど、その功績 はすでに輝かしい限りである。現在のEDMのシーンで最も注目を集めるヤングブラッドであるということは十分にお 分かりいただけるだろう。
サ ンフランシスコに育ち、5歳からドラムを始めたこの若きプロデューサーは、ベイアリアでのレイヴでエレクトロニック・サウンドに衝撃を受 け、間もなくシカゴに移り住むとすぐにエレクトロニックハウスサウンドの制作に打ち込み始めた。その後、2010年、20歳で REMIXした、Spencer & Hillのトラック「Dub Disco」が大きく評価されチャンスをつかむこととなる。
また、彼はyoutube上でビー ト制作のハウトゥーのチュートリアルを行うというチャンネルも展開しており、これまでに実に700万回近くのビューと1万8千人以上 のサブスクライバーを擁するなど、ネット上のちょっとした現象にもなっているのだ。人に教えることが好きだというJordanはギグの前に、 地元のカレッジでセミナーを開くこともしばしばなのだという。
彼のサウンドは本人のその言葉がそれをよく表現している。「音楽的にはハードでヘビーかもしれないけど、常にビルドアップして、進展していく様はプログレッシ ヴ・ハウスそのもの。いろいろなテンションが僕のトラックやセットにはあるのだけど、そのバラエティの中で遊ぶのが好きなんだ。ビッ グサウンドを創り上げて、ふとした時に全く逆のメロディに持ち込むとか…」彼のセットを聞けば、その芸術的なまでのテンションののコ ントロールに気が付くだろう。「僕はクラウドをジェットコースターに乗せたかのような気持ちにしたい、そしてできるだけ、お客からの バイブにもこたえるようにしている。でも、根底にあるのは、単純に、できるだけたくさんの人に、刺激と楽しみを与えたい、ということだけなんだよ」つまり、Lucky Dateとは我々が考えるよりもシンプルなアーティストなのである。